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第2回 生涯の師匠との出会い !



第2回 生涯の師匠との出会い !

環七ゴルフセンターから、杉並区高井戸にあるハイランド
センターに移ったのは、確かボクが小学校5年か、6年生
のときだったと思います。2歳上で、中学生になっていた次兄
が、棚網良平先生(注)の指導を受けることになっており、
ボクはそれについていったのが棚網先生との最初の出会いでした。
前回、紹介した環七ゴルフセンターで出会った宮本留吉プロ、
ハイランドセンターにおられた棚網良平先生にしても、
ボクにとってはまったく見ず知らずの人。
雲の上の存在というのともまた違って、
そもそも小学生のボクには知らない存在だったのです。

そのこと自体が非常に失礼なのですが、
しかし宮本プロ、棚網先生ともに、「上手いなぁ」と言ってくださったのを覚えています。
当時、棚網先生は中学生以上でないと教えなかったのか、あるいはボクの父親が、「小学生
にはゴルフはまだ早い」と思っていたのか、ボクが棚網先生の指導を受ける予定はありません
でした。ところが小学生の割にボクの体が大きかったせいなのか、「上手いなぁ」という言葉が
お世辞ではなく本気だったのか、ボクも兄とともに一緒にレッスンを受けさせてもらえることに
なったのです。生涯の師匠である棚網良平先生との出会いは、このようなものでした。
ハイランドセンターではその後、中学、高校までお世話になり、またアメリカからの帰国後には、
一緒にセンター内に「ラーニングゴルフセンター」を設立、プロになってからも数年間お世話に
なった、いわばボクのゴルフの故郷です。また父はジュニアスクールの保護者会長をやっていて、
ボクが渡米後にはボランティアでジュニアのコーチを10年以上やていました。


ご存知の方もおられるかもしれませんが、ちなみにハイランドセンターの内藤裕義社長は、丸
山茂樹プロのコーチとしても知られるプロコーチ、内藤雄士のお父さんです。雄士はボクの1学
年下で、小学校時代からという長い付き合いなんですね。
それはともかくとして、棚網先生には、とにかく厳しく指導されました。
ひがみっぽいと言われるかもしれませんが、ボクだけに厳しいという印象は今でも残っています。
グリップで頭を小突かれたことは日常でしたし、インパクトで止めるという素振りを、1日100本、
200本とやらされました。
百聞は一見に如かず。この練習はみなさん、とにかくやってみてください。
10回もやれば、多くのアマチュアの方が悲鳴をあげることでしょう。
しかし、こうしたトレーニングのおかげで、今、ボクのゴルフ理論の基本となっている、「脚を使
う」、「体幹部(腰、腹筋、背筋)でスウィングする」、「両脇を緩めない」といった基本中の基本
が形作られたのだと思っています。棚網先生は折につけボクの両親に、「江連は私が育てた
最後のプロゴルファーだ」とおっしゃってくださっていると聞くにつけ、厳しさは愛情だったのだと、
今さらながら思う次第です。
練習でしばしば棚網先生は、「今のは間抜けなスウィングだ」、「今のスウィングは間が悪い」
といった言葉を、ボクの頭をグリップで小突きながら、よく言ったものです。
あの当時は、その意味の真意がよく理解できなかったのですが、最近になってようやく先生
の言わんとすることが、少しだけ見えてきたような気がするんです。
というのも、かつて伊沢(利光)さんとコーチ契約を結んでいたとき、こんなことをいうんですね。
「自分の見えている部分はコントロールできるが、見えない部分のコントロールが難しい」と。
伊沢さんは物理的に、そのとき、ボクは棚網先生のいう「間」のことを思い出していたんです。
「間」というのは、ゴルフスウィングにたとえるなら、一面ではタイミングやリズムという言葉に置き
換えることが可能です。ただ、そのような言葉で表現できたとしても、実際に目で見ることは難
しい。できないものです。その目に見えないものをコントロールするのが、ことの本質に近づくこと
であり、「一流」と呼ばれる業ではないのか。「間抜け」、「間が悪い」という棚網先生の言葉に
は、今のボクにはそんな真理が隠されていたように思えるんです。一面といったのは、「間」はリ
ズムやタイミングだけでなく、まだまだ他の意味を持っています。「間」の前に「時」という字をつけ
れば、これは「時間」ですね。
リズムやタイミングという「間」は、この「時間」の中のひとつでしょう。


「間」の前に「空」と書けば、「空間」です。たとえばクラブの動きを、空間という「間」で表現す
れば、スウィングプレーンということになる。もちろん体の動き、ポジションも、この空間によって
説明ができる。やはりクラブや体が空間の中でおかしな動きをすれば、それもまた「間抜け」で
あり、「間が悪い」というわけです。
[間」の前に「人」と書けば「人間」です。ゴルフはメンタルなスポーツと」いわれますが、フィジカ
ルな動きのみならず、心の動きもまたスウィングやゴルフそのものに大きな影響を与えます。
棚網先生はよく、「グリーン上ではスパイク跡やボールの跡を最低でも3つは直しなさい。バンカー
でもそれは一緒」と口を酸っぱくして言ったものですが、「(人)間抜け」、「(人)間が悪い」
とは、即ちゴルファーとしての行いが悪いことであり、それは当然、間抜けで間の悪いゴルフに
つながる、という教えでもあったのでしょう。実に深いことを教えてもらった気がするのです。
実は近々、棚網先生にお会いする時間をいただきました。生涯の師匠である先生にお会いすることに、
今から非常に緊張しています。
棚網先生のゴルフ眼、指導力のすごさについては、まだまだ書き足りないほどですが、それは
次回、先生との対談後に譲ることにしましょう。




棚網 良平(たなあみ りょうへい)

1921年(大正10年)5月17日、東京都出身。世田谷商業卒。11歳からゴルフを始め、
戦前は東京ゴルフ倶楽部、戦後は相模カントリー倶楽部の所属となった。
現在でも相模では名誉プロで、定期的にプレーやレッスンに訪れている。50年に関東プロ、
60年に日本プロで優勝、87年には関東プログランドシニアも制している。とりわけ60年の
大洗で行なわれた日本プロは、26ホール目となる午後の8番ホールまで3ダウンの苦戦。
そこからの大逆転は、語り草にもなっている。
正確なショットとアプローチなど小技には定評がある。







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